鶴見大学附属中学校・高等学校

2009年4月に新校舎が完成した鶴見大学附属中学校・高等学校（神奈川県）は、教科教室方式を採用しており、全教科教室に天吊りのプロジェクターと、実物投影機を導入。各教科特性に合わせたICT活用が進んでいる。黒板は、プロジェクターを直接投影することを想定し、照り返しがないように表面加工されたもので、上下に動かすことができる。高等学校の生物と中学校の理科1を担当する理科講師の芝田晴彦講師に、理科ならではの活用法を聞いた。

芝田晴彦 講師

標本を拡大して注目部分を指示

豊富な生物標本を 拡大提示して新たな発見

同校にはミツバチや蝶、鉱物ほか豊富な標本がある。これまでの担当者が標本にした貴重な資産だ。標本を実物投影機で拡大すると、微細な部分までリアルに観察することができる。また、花粉や昆虫の染色体、精子や卵子など、大きく映すことで「発見」がある素材は多い。

顕微鏡を実物投影機につなぐと、従来顕微鏡を覗かなければ見えない画面を教室全体で共有できる。また、生徒たちに渡すワークシートなども実物投影機で投影しながら説明できるので、今どこを説明しているのかがすぐにわかると生徒に好評だ。「一度に全員に同じ情報を伝えられる点がいい。どこに注目してほしいのかという意図を伝えやすい」と芝田先生はいう。

USBメモリー接続で 動画教材の作成も簡単に

芝田先生が今年4月から理科の授業や教材作成に使っている実物投影機「AVer Vision 」は、500万画素の高画質、高倍率ズーム、PCレス録画・再生、USBメモリーやSDカードにも対応している。

発芽実験を撮影した自作教材

サムネイル画面で保存した静止画教材を選択

「他の記録媒体に簡単に保存できるので、自作教材を作りやすくなった」という。今学期は、インゲン豆の観察記録を製作した。「AVer Vision」は、1〜600秒ごとに連続撮影ができる。今回は10分ごとに撮影した画像をもとにした動画と1時間ごとの成長を提示するスライドショー教材を作成した。1日で倍近く成長する様子、枯れるときは一斉に枯れる様子などがわずか20秒ほどで理解できる教材となった。静止画は簡単に加工しやすく、教材を気軽に作ることができるという。

USBメモリーまたはSDカードがあればPCを使わずに動画データを保存できるため、授業では、予め録画しておいた模擬実験を投影しながら説明できる。生徒たちが実験を進めてほしい箇所まで見せてから一時停止するなど、実験を視覚的に確認しながら進めることができるので、安全確実に実験を進められる。

一度実物投影機で見せた画像は「AVer Vision 」本体に保存できるため、事後の振り返りもしやすく、他のクラスでも活用しやすくなった。今後は、「光屈性の実験」の観察動画を製作予定だ。

「AVer Vision」のアームは自由度が高いので、まずアームをできるだけ標本などに近づけて拡大、さらに大きく見せたいときには光学ズームで見せる。ミツバチの標本は、前肢の毛や、

資料から「ソテツ」を説明する

顕微鏡につなぎ、微生物を観察してUSBメモリーに保持

複眼の様子までよく見える。さらに大きく見せたいときは、画像の劣化を極力抑えた拡大技術「アバーズーム」（特許取得）を使うと、画像も鮮明だ。

表示物のピント合わせはオートフォーカスで自動調整。昆虫の眼にピントを合わせて観察した後、高さの異なる羽にピントを合わせたい場合は、手動でも微調整できるなど、微妙なピントやコントラストが調整できる機能も理科には欠かせない。

同校の理科では実験観察を大切にしており、実物投影機は実験観察の効果をより上げるツールとして活用されていた。

ここがポイント！

自作デジタル教材作成ツールとして有効に活用

生き物の標本などを拡大提示して、体の詳細なつくりまで的確に説明できるといった利点は誰にでも明らかであり、それが「新たな発見」につながります。また、実物投影機を、自作デジタル教材の作成ツールとして有効活用しているのがポイントです。特に、インターバル撮影機能によって作成した「インゲン豆の成長を早送りで視聴できる動画コンテンツ（静止画を連続再生したもの）などは、授業中の限られた時間での観察には非常に効果的な教材ではないかと思います。