和歌山大学教職大学院 教授 豊田充崇
高校の学習指導要領の改訂が進められていますが、やはり小・中学校にならい、高等学校でも「主体的・対話的
で深い学びの実現にむけた授業改善」が求められています。しかしながら、高校での授業はどうしても指導すべき
分量が多く専門的な内容となるため、一方的な知識伝達型授業となってしまいがちです。「主体的・対話的な授業は
理想だが、時間がかかる。試験までに範囲を終えるのは至上命題だ」とおっしゃる先生方が多いのも確かです。
一方、新宮高校の先生らの実物投影機の活用状況からは、学びの主体を生徒にシフトさせていこうという強い思い
が感じ取れます。
まず、「数学A」の青山先生は、生徒が解答したプリントに書き込みながら説明することで、板書時間の短縮とよ
り生徒目線への転換を図っているといえます。「情報の科学」の安倍先生の授業も、「円滑な授業展開」と「プリン
トやノートに記述した生徒の意見の全体共有」のために実物投影機を活用しており、「保健」の山本先生も、生徒の
考えを映し出して、その意見をもとにクラス全体で考えることで、理解を深めるものとして用いています。つまり、
実物投影機で板書や説明の時間を短縮しつつ、その短縮した時間を「生徒らのノートやプリントの共有」にあてるこ
とで、考え方や理解をより深めることにつなげているといえます。他者の考え方を自分と比較したり、許容したり、
時にはクリティカルに考えたりすることは、主体的で対話的な授業のはじまりともいえるでしょう。
授業展開を振り返ってみて、「効率的に知識を伝達する場面」と「生徒の個々の学びを全体につなげる場面」を見出し
つつ、その時間的なバランスを事前に決めておくという一工夫だけで授業は変わります。 生徒らにとっても、「ストレス
フリーなスムーズな理解」と「多様な授業展開による学習意欲の維持」が、結果的に試験の得点にも結びつくはずです。