上越教育大学附属中学校

中学校/技術活用科・実践保健体育科

「自立して学ぶ」生徒を
育てる活動を展開

上越教育大学附属中学校では、2010年10月15日、文部科学省研究開発校として「自立して学ぶ生徒を育てる教育課程の研究開発」をテーマに、第1年次の公開授業と研究発表が行われた。同校では、知識や技能を生きて働く知恵や技術に高め、長年にわたって活用できるようにするため、従来の教科を踏襲した「基礎教科」と、各教科から総合的な学習に連携・発展させた「総合教科」を設定している。総合教科では今日的な課題を取り上げているのが特徴だ。

松風嘉男 教諭

技術活用科
実物投影機で定点観察する

1年2組の総合教科「技術活用科」(授業者=松風嘉男教諭)の授業は、素材を取捨選択し、軽くて丈夫な橋を製作する活動を通して、堅牢な構造や技術、加工に関する理解を深める授業内容だ。既に丈夫な橋の構造について学んだ生徒らは、ペアになり、バルサ角材、竹ひご、ひのき角材、アクリル樹脂などから材料を選択、設計図を書き起こし、橋の製作を進めていく。

本時の流れや橋の製作方法については、グループごとに2台程度設置された「デジタルフォトフレーム」に保存された資料を閲覧しながら進めていく。

制作した橋の高度を確認し、実物投影機で記録する

製作した橋は、荷重をかけ、強度を測定、補強点を確認する(写真)。測定の様子は実物投影機で撮影、画像として保存し、改善点などを話し合うための資料とする。

橋の強度を測定し終えた生徒らは、補強すべき点は青、修正箇所については赤を使って設計図に書き加えていった。

松風教諭は、デジタルフォトフレームを活用した点について、「PCよりもコンパクトで、作業台の上に置いても邪魔にならず、安価で壊れにくい。余計な機能がなく、生徒に見せたいものだけを見せることができる。プレゼンソフトで作った資料もjpeg保存すれば閲覧できる」と述べる。

実物投影機については、「実物投影機は撮影位置を固定して定点観測できるので事後資料としての価値が高くなる。サムネイルで比較するだけで改善前と改善後のわずかな違いなどもひと目で比較しやすい。SDカードを入れてボタンを押すだけで撮影でき、使うための指導もほとんど必要がなく、作業がスムーズに進む」と述べる。

実物投影機2台を設置

同校では4月より、アバー・インフォメーションの実物投影機「AVer Vision」の活用をスタート。当初はワークシートを映すことから始めたが、次第に各教科で様々な活用方法が生まれ、5台の実物投影機は全学年でフル稼働しているという。

「AVer Vision」のメリットについては、「自由度の高いアームで無理なく縦や横、斜めなど様々な角度から撮影することができる。また、RGBやUSBケーブルなどで、各種機器に簡単に接続でき、授業準備が簡単に済む。静止画はもちろんPCなしで動画も撮影でき、本体やUSBメモリー、SDカードにデータを保存できる点が使いやすい」と述べた。

実践保健体育科
調査・分析して生活習慣を改善

総合教科「実践保健体育科」を公開した2年1組(授業者=高瀬育子教諭)では、自分たちの生活習慣における課題を教材とし、理想的な生活改善について考えを深める授業が展開された。

生徒はこれまでに、「食事」「運動」「睡眠・休養」それぞれの重要性についてグループごとに調査し、マインドマップで自らの生活習慣を振り返り、問題点や課題を明確にしている。

本時では、別の課題を持つ生徒同士で発表し合い、グループで話し合いながら生活習慣の悩みを解決し合った。

授業中、高瀬教諭は、今取り組んでいる課題や「グループ発表会〜○時まで」など、活動の流れを実物投影機で提示しながら進行した。

グループ発表会で共有した情報を基に、生活習慣に問題のあるA男くんの「朝すっきり起きられない、遅刻寸前で朝ごはんを食べずに登校する、午前中はぼーっとしており、塾のある日の帰宅は22時過ぎ。肉料理や揚げ物が好き、運動はあまり好きではない」という生活について、グループごとに問題点を分類、生徒たちは自分の課題と重ねながら、「食事」「運動」「睡眠・休養」の観点について改善策を話し合う。

ワークシートを映し、生徒の意見を表に置いていく

問題点を分類する際、高瀬教諭は、生徒に配布済のワークシートを実物投影機で拡大提示。A男くんの解決すべき課題について生徒らの発表内容に従って予め想定した答えを短冊状にしたものを用意し、「睡眠・休養」「食事」「運動」に分類しながらワークシートに貼付し、表を完成させた。

ここがポイント!

学習履歴(作品の製作過程)を保存しBefore-Afterを比較する

学習履歴(作品の製作過程)を保存し、Before-Afterを比較することで「差異」を認識するといった特色が印象的な事例です。本来、教育現場においては、「学習のプロセス」をもっと重視すべきなのですが、それに改めて気づかせてくれた事例かと思います。

また、実物投影機は意見を交流・共有するための媒体としても活用しており、生徒に向けての提示メディアだけではなく、生徒どうしをつなぐ役割も果たしています。